2013年1月21日月曜日

2012年ベスト・ディスク 10位〜1位



完璧なソングライティング、最小限の音とどこまでも深く広がりを魅せるサウンドスケープ、深夜に聴く音楽の代名詞的なバンドの2ndアルバム。
実際には地味ながらも地味だということを感じさせない二人のボーカルには深く深く心酔してしまう。各紙でも高い評価を受けているがそれも納得。1stアルバムからの進化に感動せざるを得ない作品になっている。







90年代から活躍する異彩を放ったベテランシンガーの7年ぶり4thアルバム。7年ぶりという期間を感じさせない出来。彼女自身の最高傑作と言っても良いだろう。サウンド自体はほとんどがピアノ、ヴォーカル、パーカッションで構成されているように非常にシンプルながらも卓越したジャズ的要素も含んだパーカッション、そしてなによりささやくように舌足らずな英語で歌っていたかと思えばエモーショナルに感情を剥き出しにするヴォーカル。これは昔からだが彼女の世界に引き込まれる最大の原因かつ、いつの時代も評価され続けられるべき飛び抜けたヴォーカルスタイルだろう。彼女が天才かどうかはわからないが他に形容したり比較出来るアーティストがいない。それほど希有な才能を持ったアーティスト。







モントリオールの男女二人組のデビュー作。Which House
などからの影響も色濃く、HIP HOPとの相性も抜群。(T.SHIRTなるラッパーとのコラボ作も最高)
アトモスフェリックでメルヘンチックな世界、ヘビーな低音ビート、キラッキラな浮遊感シンセ、ドラマチックに絡む女性ボーカル。私個人が求める2012年の顔そのものだった。
今年のフジロックでのライブはなんとも微妙だったらしいがここまでCD音源が素晴らしいとそれも何故か許せてしまうような気がしてくる。







Odd Futureから派生したLeft BrainとHodgy Beatsの二人組の2ndアルバム。ダークで遊び心満載な気持ち悪いMVが売りのOFだがタイラー・ザ・クリエイターやフランク・オーシャンに埋もれるべきではないタレント性を持った二人の最高傑作。浮遊感のあるトラックでラップしているのが基本だが一転してラテン系のトラックで魅せる”La Bonita”は今年の個人的なアンセム。そこまで期待していなかったからここまで上位にランクインしたのかと思ったが、そんなことはない。今年のHIP HOP代表作で間違い無いだろう。







今年はThe Weekndに代表されるアンビエント・R&Bの年といっても過言ではなかった。数々のアンビエント・R&Bシンガーが素晴らしい作品を出してきたのだがその頂点と言える作品がこのデトロイトのR&Bシンガー、JMSN(Jameson)のデビューアルバム『†Priscilla†』 である。アトモスフェリックでドラマチック、ダークな世界観により構成されていて陰鬱な内面、またそこから生まれるエモーショナルで暴力的な一面にも引き込まれて仕方がない。音楽的には大分異なるが声の深い部分から感じる、当時のNIRVANAのカート・コバーンにも通ずるロック的な要素も含む彼の歌唱法や音楽性には今後も注目し続けるべき存在。アンビエント・R&BというのはThe Weekndのことなのだがそれをも超えた代表作として心の深くに刻まれている。







2012年はOdd Futureの年といっても過言ではなく、それほどまでに飛び抜けたタレント性や音楽性をクルー全体で魅せてくれた。Odd Futureのリーダー、Tyler The Creator、The Internet、7位で紹介したMellow Hype、そしてこのニューオリンズ出身の現在25歳の天才R&Bシンガー、Frank Ocean。音域が狭くねっとりと(といってもあまりエロくはない)ファルセットも交えて歌う様は大分音楽性に違いはあるKeith Sweatに似ているのかもしれない。「Thinking About You」「Sierra Leone」「Sweet Life」あたりは艶美で文句なしの絶品アンビエントR&B。アルバム全体を通してアンビエントR&Bシンガーかと言われたらなんとも言えないのだがOFの客演作品のように淡々と歌うことも、クロスオーバー作品のように白く歌うこともファルセットを交えてセクシーに歌うこともでき、シンガーとしての幅広さにただただ言葉を失ってしまう。このデビュー・アルバム前から各レーベルが彼の取り合いになっていたのも頷けるほどの天才の登場は今年の大事件の一つだ。







カナダ、モントリオール出身の天才d'Eon のニュー・アルバム!元々はドローン・ミュージック・アーティストな彼だが今回、初のフル・アルバムではドローン、アンビエントの要素も十分に含み、彼自身がAlternative R&B称とするように甘いボーカルとメロディーに富んだ素晴らしい作品に仕上がっている。細かく刻んだスネアに重なるフワフワとしたシンセとリバーブに効いたボーカル、さらにピアノも重なりなんとも心地良い作品。対照的なことを言ってしまうがGabriel pt.IIなどはボーカル、サウンドエフェクト共に非常に気持ち悪く鬼才などという言葉は彼にピッタリだ。ポストAphex Twinなどとは恐れ多くて言えないが、ところどころ音の作り方、組み込み方などは彼に似ている部分もある。近い将来、戦車など買わなければいいのだが。。









3The Airplane Boys - Alignment

Beck MotleyとBon Boyageから成るカナダのMCデュオ、The Airplane Boysの今年の2月にリリースしたフリーダウンロードのMIXTAPEが非の打ちどころがなく本当に素晴らしい。前作のMIXTAPE、『Where've You Been』からThe Weekndを手掛けるトロントのプロデューサー、Illangeloが担当したことで話題だったが、今作はその前作と比較できないほどの作品をリリースしてきた。前作もそうだがロック方面からのサンプリングネタも面白いし、ダークで浮遊感漂うアンビエントな雰囲気を持ったサウンドからダブステップ、4つ打ちまで自身のものに消化出来てしまうクロスオーバーな音楽性、何よりドレイクのようにラップだけではなく甘いヴォーカルで魅せるフック部分は最高で何をどうやっても文句など出てこない。まだ世間の注目度としては低いがドレイク級に成り得るネクストブレイクアーティストとして今後どのHip Hopアーティストよりも注目していていいだろう。(Haleek Maulも)








前作のデビューアルバムから脚光を浴び始めたUKの7人組の大所帯バンド、Submotion Orchestra。
ダブステップ+生演奏ジャズと称されるこのバンドのニューアルバムは前作を軽く超える大傑作に仕上がってきた。前作よりも艷のある女性ボーカル、スリリングでベース・ミュージックに重点を置いたこのアルバムは2012年の第2位で間違いなし。時にチルアウトな雰囲気の演奏に異次元へ飛ばしてくれるようなソウルフルなボーカル、時にブリブリに重点音を効かせて攻撃的なヒリヒリとしたピアノやサックス、トランペット。自分でもまさか管楽器の第一音目で鳥肌が立つとは思わなかった。打ち込みの機械的な音だけではない生演奏のグルーヴがとにかく素晴らしく、ベース・ミュージックの上にそれが乗り、ソウルフルな女性ボーカルが乗るドラマチックな大傑作。個人的に◯◯+◯◯というのはキャッチコピーから嫌いだし聴いてもまず良いと思うものは滅多に見つからないのだがこのアルバムは声を大にして大傑作と言っていいだろう。









このアルバムが出た瞬間からこれは今年一番の作品なのではないかと思ったが案の定これを超える作品は出て来なかった。もっと言うと、ここ数年で考えてもこれを超える作品は出ていないと思う。それほどぶっちぎりの第一位のアルバムが三人体制になってからTomato n' Pine初のフル・アルバム、"PS4U"だ。一時期軽視されていたディスコ・ポップをここまで素晴らしい楽曲で見事に復活させ、個人的にはポップカルチャーにデカデカと名前を残した作品とまでなった。Mcfadden and Whiteheadのディスコ大名曲、"Aint No Stopping Us Now"ネタの"ワナダンス"や空まで突き抜けるような爽やかなシンセといつまででも踊らせてくれるようなフロア使用に生まれ変わったPUFFYのカバー(リメイク)、古臭いシンセやドラム(良い意味)が鳴り響くキラキラディスコポップ、"POP SONG 2 U"、このアルバムでの一番の隠し球だろう、歪んだギターが印象的なハードコア・ポップ、"そして寝る間もなくソリチュード(SNS)"と、ハズレ曲が本当に一切ないのですべて言いたくなってしまう。全体的に70's、80'sのディスコやソウルからインスパイアされたであろう楽曲たちは日本のアイドル3人組だがどこまでも黒く、どこまでもポップに突き抜ける大名盤となっている。
このアルバムの発売は近年稀に見るほどの最高の音楽ニュースになったが、それと同時に年末には本当に悲しいニュースが入ってきた。 "トマパイ散開" この文字が目に入ってきたときは目の前が真っ白になってしまった。見方を変えればここまでの大名盤を世に排出して散開というのはある意味かっこいいのかもしれないが私は未だにそこまでの気持ちの整理が出来ていない。もうトマパイはなくなってしまったが個人的にはLCD Soundsystemと同じくらい大事なグループになった。(こちらももう解散しているが。)
たった一枚きりの大事な大事なアルバム。安い言葉に聞こえるかもしれないが一生大切にするだろう。本当にありがとう、トマパイ。










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