2012年8月27日月曜日

クロスオーバーするアンビエント・ワールド その1



さて昨今のHip Hop、R&B界に新しい風が吹き込まれた。いや、歌の要素が入っている場合がほとんどなので正確にはR&B界のみかもしれない。その立役者となったのがご存知、カナダ出身のDRAKEだ。(写真左)
彼は元々子役から活躍している役者だったのだが2009年に出したMIXTAPE『So Far Gone』が彼の人生を大きく変える。



Cash Moneyとも契約して、ここまでメジャーになったアーティストに触れても当たり前のように知っていてつまらないかも知れないが一応。ラップもするし歌いもするアーティストなのだが、このようなアーティストはローリン・ヒルなどもいたし別に珍しくはない。しかし彼は浮遊感のあるシンセを多用したアンビエントな雰囲気を持たせたトラックを多く使用し艶美な世界を映し出し爆発的な人気を博した。結果、この後公式アルバムを『Thank Me Later』,『TAKE CARE』と2枚出すがどれも高い評価を得ている。


ここでもう一組のキーパーソンがDRAKEとも2ndアルバム『TAKE CARE』で共演を果たした、同じカナダ出身のThe Weekndだ。(一番上の写真右)
彼らはR&Bバンドという珍しい形態で人気を博したが未だに正規盤は出ていない。
MIXTAPEのみでここまで人気が出て大型フェスなどからもオファーがくることは今ではそこまで珍しくなくなったがこういう動きは逐一チェックしておいた方が良い。
アンビエントR&Bがどういうものなのかと問われたら現行シーンでは彼らのことを指している。
決まった形などはないが、浮遊感を持たせたシンセにリヴァーブを効かせたボーカルワークを用いたものが簡単に言うと(簡単すぎ)アンビエントR&Bというものだ。
彼らのデビューMIXTAPEと3枚目のMIXTAPEを載せておく。(ちなみに2枚目はこちら





と、ここまで書いたが以前にsummerbreeze1さんがアンビエントR&Bについて素晴らしい記事を書いているのでこちらを見た方がよっぽどためになる。
カニエ・ウェスト『808s & Heartbreak』がルーツだということは気づかなかった。
たしかにそうだ。アンビエントR&Bの出す雰囲気といえば背徳的であったり、耽美な世界観であったり、陰鬱な内面を映し出していたりという作品が多い。
そう思うと当時のカニエは母親が亡くなり、恋人に振られ、ラップを放棄しすべて「歌」によって一つのアルバムを作ってしまったが、ここまで挙げた要素がすべて含まれている。

書きかけのブログがここまで素晴らしい記事を書く方と被ってしまった時の絶望感はすごかった。思わず一度消してしまったがもう一度なるべくsummerbreeze1さんと被らないように書いていこうと思う。



HIP HOP方面から二組のアーティストを取り上げてみる。
これまたカナダからThe Airplane Boys(写真左)とカリフォルニアの4人組グループ、The Pack(ザ・パック)のメンバーであるYoung L(写真右)だ。



Beck MotleyとBon Boyageから成るカナダのMCデュオThe Airplane BoysはTHE WEEKNDを手がけるプロデューサーIllangeloがプロデュースを担当したことでも話題だった。彼らはロック方面からのサンプリングネタも面白いし、ダークで浮遊感漂うアンビエントな雰囲気を持ったサウンドからダブステップ、4つ打ちまで自身のものに消化出来てしまうクロスオーバーな音楽性の持ち主。今年の2月にリリースしたMIXTAPE『Alignment』が個人的な上半期ナンバー1に輝くほど素晴らしい作品なのだがここでは一応アンビエントなものをご紹介。(ちなみに前作Where've You Beenはこちら)






LIL Bも在籍していたTHE PACKからYOUNG Lのソロ作。THE PACK時代からすべてのトラックを彼が手がけていたのだがゲームの電子音を使用したものからアンビエントものまで振り幅は広い。そんな彼の5月にリリースしたMIXTAPE『Enigma Theory』はThe Airplane Boysよりもアンビエント色が強い。浮遊感のあるシンセの上で歌っていたり、ダークな雰囲気を醸し出し変幻自在のフロウを魅せる。
さらに面白いことに女性フォークシンガー、バンド(ブルックリン出身のSea of Beesとメリーランド州バルチモア出身の二人組、Wye Oak)をも客演に招いた曲"Automated Oceans ft. Sea of Bees"や"I Can Show You ft. Wye Oak"でも見事にアンビエントなHip Hopに消化している。(さすがに少しフォーク色はあるが)
彼自身の曲ももちろんそうだが素晴らしい二組のアーティストの楽曲も紹介しておく。(客演にMr Hudsonもいるが彼はKanye West率いるG.O.O.D Musicの一員としてカニエはもちろんJay-Zなどの大物ラッパーの作品に客演されていたりとHip Hopファンからはかなり有名なので省略)
ちなみに同じグループのLil' Bは多作で有名だが今年の2月に出したMIXTAPE『Gods Father』も素晴らしかった。










さてここからアンビエントR&Bに話題を移す。
アンビエント界隈(こんなものあるのか)のファンから最も待たれているのがブルックリン出身のTom Krellによるソロ・プロジェクト、How To Dress Wellの新作『Total Loss』だろう。
昨年はオーケストラをフィーチャーした実験的サウンドなEP『Just Once』をリリースした彼だが新作から1曲、フリーダウンロードでリリースしたりJanet Jacksonのカバー曲をフリーで出したり(これは新作収録予定なのか?)秋にリリース予定の新作に向けて活動が活発になってきた。どちらも素晴らしいファルセットヴォイスにアンビエントR&B直系のリバーブを効かせたヴォーカル、美しいストリングスなど、かなり新作が期待出来る内容になっている。










男女2人からなるスウェーデンのエレクトロ・ポップ・デュオ jj(ジェイジェイ)
最近では6月に5曲入りフリーEP『High Summer』をリリースし、そちらも話題になったがエレクトロ・ポップ・デュオなだけに2009年のデビュー時はAIR FRANCE×TOUGH ALLIANCEなどと紹介されていたようでインディーロック感をかすかに漂わせつつキラキラポップなエレクトロサウンドを1stでは鳴らされている。さらにデビュー時から面白いことにLil' WayneやDr Dreのカバーも披露し、ブラックミュージックファンからも話題を呼んだ。最近の方がアンビエント色は強いがどれもアンビエントに通じる素晴らしい楽曲を聴かせてくれる。



もちろん先ほど言ったフリーEP『High Summer』収録の"High Summer"も素晴らしいアンビエントR&Bだがその他にもNe-Yoとコラボするなどブラックミュージックへのアプローチも盛んだ。



アルバム『nº3』から

アルバム『nº4』から





エレクトロつながりでもう一組。マサチューセッツ州ケンブリッジ出身の5人組エレクトロ・ポップバンド、Passion Pit(パッション・ピット)
インディー・レーベルFrenchkiss Recordsより6曲入りEP『Chunk of Change』を2007年にリリースし、本国アメリカでも話題になり、日本でも当時のSnoozer誌で高評価を得ていた。もちろんエレクトロ・ポップバンドなので基本、キラキラポップでハートウォーミングな楽曲がほとんどで jj よりもエレクトロ・ポップ感は強いのだが、ニューアルバム『Gossamer』から"Constant Conversations"はスイートでアンビエントR&Bにも通じる素晴らしい1曲。同曲のSt. LuciaによるRemixも素晴らしかった。








Odd Futureから若き天才シンガー、Frank Ocean(フランク・オーシャン)
デビュー前にも関わらず、ジェイZ&カニエ・ウェストの『Watch The Throne』に参加していたり、ベストアルバムなんてものもMIXTAPEで発表されていたりと何かと話題たっぷりな彼。
そんな彼が満を持してデビューアルバム『Channel Orange』を出したのだが、それが本当に素晴らしい。
今年のベストアルバム候補の1枚であり、"Thinking About You" , "Sweet Life"なんて今回のアンビエントR&Bにも通じる素晴らしい楽曲だろう。
全く話しは変わるがここまで音域が狭いR&Bシンガーでここまで成功している人(彼は一応まだ成功とは言えないから注目かな)で言うとKeith Sweatかなと思った。サウンドはもちろん全く似ていないが歌唱法は似ている。照らし合わせてみるのも面白い。
Frank Oceanについて詳しく知りたい方はこちらこちらこちらで書かれているのでここを参考に。





ここでFrank Oceanの大きな陰に隠れてしまっている印象のシンガーを紹介。
現在26歳のオハイオ州シンシナティ出身のMateo(マテオ)
音楽一家に生まれた彼は幼い頃からクラシックピアノを習い、歌っていたらしいが本格的な音楽キャリアは2009年のMick Boogieプレゼンツによる『Underneath The Sky Mixtape Ch. 1』から。のちにアリシアと長年コンビを組んでいたKrucial Brothersのレーベルに移りデビュー曲『Say It So』でデビューする。(Additional VocalにAlicia KeysとSwizz Beatz.も参加している。)一つまえのMIXTAPE『Love & Stadiums』でLil' WayneのカバーやEmpire State of Mind part 3なども披露しているメジャー寄りのシンガーだ。今月に出したMIXTAPE『Suite 823』からはPOPなものもあるがアンビエント色の楽曲もあり、素晴らしいのでここで紹介。"Say You Will" , "Looking You Up " なんて絶品だろう。


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Love & StadiumsはDatpiffでもなぜかすべての曲はDL出来ないので別リンクを張っておく


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